[まぶしくてラビンユー]



つり球夏ユキ本
R18
ユキが晴れを待ち望む話。時間軸は4話で引いた風邪が治った1週間後です。
ハルはよく出てきますがアキラは4話辺りの話なのであまり出てきません。
※完売しました


 ぬるくなりはじめた潮風が当たる裏手の堤防。学校に行く前に朝釣りに興じているユキと夏樹は、今日もまだ日が昇る前に起きだし、夏樹が決めたポイントで釣りをしていた。ユキはまだ初心者に毛が生えた程度で、先生役をしてくれている夏樹に頼りっぱなしの状態だ。
「そういえばユキ、風邪はもう大丈夫なのか?」
 リールを巻きながらふと夏樹は問いかけてきた。風の音が強めでも、声を張り上げなくても聞こえるくらい近くに横並んでいるふたり。ユキは一瞬びっくりしたように硬直したが、すぐにロッドを動かすのを再開しながら口を開いた。
「う、うん。もう平気。大体ハルの奴が大げさにしすぎなんだ」
 ユキがしんじゃう〜なんて騒いで。熱に朦朧とした頭で落ち着けよと言ったことをユキは思い出す。夏樹はその様子を思い出したのか、ははっと笑い声を上げた。
 一週間ほど前、色々なことがあって海に飛び込んでしまったユキは、そのまま熱を出してしまった。宇宙人を自称するハルは風邪が何なのか理解できないような状態で、更に料理をすることすら出来ない。ユキは久々に出した熱に最初の方は立ち上がることも難しく、慌てに慌てたハルがピンチヒッターに隣に立つ夏樹を呼んだのだった。家で毎日料理をしている夏樹の作るお粥はあったかくて、味は分からなかったけれど、わざわざ来てくれたことが嬉しかった。何だかそれだけで苦しいのがなくなる気さえしたのだった。ユキはすっかり熱が下がって、こうして早朝釣りに出かけられるようになったことを嬉しく思いながら、がちゃがちゃとリールを巻いた。
「そういえばそのハルは?」
 ふとナツキはあたりを見回すような仕草をしながら問いかけた。いつもならば早朝とは思えない高いテンションで楽しげに釣りをしているハルだが、今日はその姿が見当たらない。朝ご飯は一緒に食べたからここに向かう道すがら、後ろをついてきていると思い込んでいたが、ついた時にその姿はなかったのだ。