[小さな庭のツァーリ]



勇ヴィク本
A5/50P/R-18
サンクト移住後、すこしすれ違った二人がダーチャに行って青姦する話です。ご飯食べたり踊ったり、えっちなことしたり。
表紙を土器様に描いていただきました!


 スポンサーの話に付き合っている間に、練習を終えたヴィクトルは先に帰宅していたらしい。外から見上げると、部屋の窓から明かりが零れている。
「おかえり、勇利」
 一緒に暮らしているアパートの扉を開くと、満面の笑みを浮かべたヴィクトルに迎えられた。帰宅してから一旦着替えたらしく、朝着ていたものとは違った、暗い灰色をした薄手のニットに、ゆるっとしたボトムスを合わせている。練習のあとだからか前髪が少し乱れているのが可愛らしい。勇利は無意識に安堵の息を吐いた。
「うん、ただいま」
「撮影どうだった?」
 ヴィクトルは仕事が決まってから、朝一緒に家を出るまでずっと、今日の撮影のことを心配していた。今も、不安げな瞳はまるで不出来な弟を見るかのようだ。
「普通……かな」
 靴を脱ぎ、マフラーを取りながら答えると、不満そうな言葉が背中に投げかけられる。
「普通ってなに」
「順調だったってことだよ」
 振り返って笑みを作ると、ヴィクトルはようやく納得したらしい。ぱたぱたと後ろをついてきながら、腕を取られた。その手はすぐに下へ滑って、手をきゅっと繋がれる。
 並んで歩けるくらい広い廊下。今の勇利より幼いヴィクトルがひとりで暮らすようになってから、ずっとこの部屋で暮らしてきたと言っていた。
「晩ご飯、俺もう食べちゃったんだけど」
「良いよ、でも晩酌するんでしょ?」
 リビングダイニングの食卓にはひとりぶんの食事の準備と、グラスがふたつ。ヴィクトルはひとりで食事をさせてくれない。
「勇利がそう言ったら断れないじゃないか〜」
 最初からその気のくせに、仕方なさそうな顔をするのが可愛い。勇利は笑みを浮かべた美しい顔、その唇にキスをひとつ贈る。ちゅ、と音が鳴った。続いて甘い声。
「んっ……、ゆうり」
「ただいまのキス」
「遅いよ」
 自分も忘れていたくせに、そんな風に苦情を言って、キスを返してくる。リビングルームに入るまであと一歩というところで繰り返しキスをする自分たちを咎める人間など誰もいないのだけれど。
 ぐるるるる。
 と思ったら、自らその空気をぶち壊してしまった。
「……あ」
「可愛い仔豚ちゃんにはまず美味しい餌、だったね」
 唇を触れ合わせたままヴィクトルが笑って、名残惜しむようにぺろりと舌で舐められた。
「準備してあげるから、座ってて」
「うん」
 ヴィクトルが言う準備は、テーブルの上に乗っている料理を電子レンジで温めて、冷蔵庫の中にある冷たいサラダを取り出すことだ。
 競技者として綿密なウェイトコントロールを行っているヴィクトルは、家でする食事は全て、プロのフードコーディネイターにメニューも作成も任せている。勇利も、ヴィクトルに言われるがまま同じメニューを摂っていた。
 今日のメニューは季節の野菜を使った冷製サラダと、ニシンとサーモンの塩漬け、白パン。メインはトマト味のミートボール。勇利の皿に乗っているのはヴィクトルが食べた量よりも少なめにされているのだろう。美味しそうな食事を前にして、ぐるるる、とまた腹が鳴った。
 今日は精神力を使いすぎて疲労度が高い。
(ずっとスケートだけ滑ってたいんだけど、そういうわけにもいかないしな……)
 程なく温まった食事を持って、ヴィクトルが戻ってくる。
「できたよ、勇利」
「ありがとう」
 ヴィクトルは向かい側の椅子に座って、ウォッカと瓶に入った果実のジャムを、それぞれグラスと皿に取り出した。
「最近それ、毎日食べてるね」
「うん、美味しいよ。勇利も食べる?」
「ジャムはやめとこうかな」
 砂糖の塊というイメージがあって、太りやすい勇利はどうしても敬遠してしまう。そんな言葉を気にすることもなく、ヴィクトルは皿にたっぷり取った果実をスプーンですくって、おいしそうに舐めている。日本のジャムよりもシロップっぽい液体に浸かった、まだ形を残した果実は苺とカシスらしい。
「これはね、送ってもらったんだ」
 ヴィクトルは食事をする勇利の前で酒とジャムを交互に口にしながら、上機嫌に言い募った。
「へえ……」
 勇利はサラダを口にしながらヴィクトルの会話に相槌を打つ。だが他の考えに捕らわれていたせいでつい生返事になり、ヴィクトルに顔をしかめられてしまった。
「……勇利、元気ない?」
「そんなことないよ」



-----------------------------------






「あっ、あ、っ……んん、ゆうり、もうだいじょうぶ……」
「だめだよ、ローションないんだから、っ、もうちょっと」
 Tシャツの上に着ていた水色のパーカーを脱いでヴィクトルの尻の上に敷き、下半身の衣服をすべて脱がせた。勇利は下半身をくつろげただけの格好で覆いかぶさり、ぐしゅぐしゅと中を解す指はもう三本になって、みちりと肉筒を広げている。ぐにぐにと柔らかくなった肉に短い爪が食い込み、ぐっと押すと、向こうに何かがあるような感触。
「あっ!」
 瞬間、ヴィクトルは声を上げる。
 ヴィクトルの気持ちいいところを押さえ込んで、明るい空の下に似つかわしくない甘やかな声と艶姿を堪能する贅沢に身が震えた。息がどんどん荒くなる。
「ふー、っ、は……ヴィーチャ……」
 さっきから限界をとっくに越えている勇利の性器は、張り詰めて涎をぽたぽたと零している。だらしなく唇を開いて息を吐き出した。まだ頑なな窄まりを解そうと指を動かし、唇はせわしなくヴィクトルを甘やかす。頬や耳、唇や首筋に落とされたキスは、触れるだけのものから舌を出して舐めるものまで。
 ヴィクトルが身をよじった瞬間に持たれかかっている木の葉が揺れて、白い花がいくつも降ってくる。腹の上に落ちた一枚は、露出されて震えているヴィクトルの性器に絡みつき、その美しい花弁がいやらしい液体にじわりと濡れた。
「ん……ゆうり、も、くるしい……」
 指先だけで感じすぎて、ヴィクトルははふはふと甘ったるい息をひっきりなしに零していた。眇めた瞳に誘惑される。勇利は我慢ならず、ついに指をずるりと引いた。名残惜しむように熱い肉が指に絡みついてきて、唾液を纏ってふやけた指がきゅぽんと抜ける。
「は、ぁ……ヴィーチャ……」
 正面から抱きしめて口づける。丸まった背にヴィクトルが腕を回して、ゆっくりと脚が開かれた。受け入れる体勢にごくりと喉が鳴る。
 ここはいつものベッドの中の、白いシーツの上ではない。勇利の視界の中に入ってくる木漏れ日や、緑や、白い花。耳に入ってくる、風や、鳥の鳴き声。全てが何でもない日常のはずなのに、木の下でしている行為があまりにもその場に似つかわしくないせいで、興奮が止められなかった。
「っ、ヴィーチャ、はいっていい?」
「は、っ……うん、いいよ、ゆうり……おいで」
 改めて両手を広げられて、その中に飛び込む。ぎゅっと抱きしめられて、キスをして、そのまま勇利はヴィクトルの中に性器を埋めた。
「あっ! ……は、ぁ……っ…、ゆう、り……っ、」
 苦しそうにヴィクトルが声を漏らした。入り込むこの瞬間は、何度やろうとも慣れることがないのだろう。腰を自ら動かして角度を調節し、自分が一番苦しくない場所を模索するこの作業は、勇利にとっても狭い窄まりにきゅうきゅうと締められて、気を抜くと暴発してしまいそうで恐ろしい。
「ん、ヴィーチャ、っ……は、ァ……」
 ヴィクトルの頭に触れている木の葉がガサガサと音を立てる。いつも片目を覆う長い前髪が乱れていて、その姿を見ると勇利はいつも背中がぞくっとしてしまう。いつだって美しく整っているヴィクトルを乱せるのは、スケートと、自分だけなのだと強く実感できる瞬間。
 ひとりでに喉が鳴った。
「は、っ……ヴィーチャ、もう、うごく……ね」
「えっ、待って、っ……! ゆうり、っあ! ぁ、アっ……はァ、っ……!」
 仰け反り、喉を無防備に晒して、ヴィクトルはぐっと入り込まれた質量に身悶えている。苦しいのか気持ちいいのか、この瞬間はいつも分からない。けれど、ヴィクトルは勇利を抱きしめる腕を緩めないし、苦しげな吐息はだんだんと甘く蕩けて、生理的な涙はあまりにも美しい。
 ぼうっと見惚れていると、きっと睨まれた。
「ゆうりぃ、そんなに、っ、みないで……」
「やだよ、どうして」
 こんなにも美しくて可愛い生き物を前にして、見ないなんて選択肢があるはずない。逆にじっと強い視線で見下ろせば、ヴィクトルは弱弱しくかぶりを振る。
「やだ……」
「それ逆効果だって、いつも言ってるでしょ……」


-----------------------------------






「ん、……ゆうり、っ……」
「もっと腰落として、ねえ……」
 根元まで包まれたいと、真っ赤な顔をして耐えている勇利がいじらしい。今すぐにでも腰を動かして強引にしたいのを我慢しているのだろう。歪んだ眉間、ぐっと噛んだ口もとがセクシーだった。強い瞳に射抜かれて、ヴィクトルは脚の力をそろそろと抜いていく。
「あっあ、あ……っ、」
 ずる、ずずっ、と深く入り込んでいく。濡れた粘膜が勇利のものを強く包み込んで、絶対に離さないというかのように締めつけるから、おくまで入れるのは大変だった。背中をまっすぐにして角度を調節する。
 中途半端な体勢をキープするのは疲れる。ましてベッドはスプリングがきいていて、膝が深く沈みこんでしまうのだ。
「はっ、は……、ぁ……っん」
「ん、ヴィーチャ、……きもちい、」
 勇利は目を細めてこちらをじっと見ている。ぴんと立ちあがって揺れている性器も、大きく口を開いて勇利のものを食んでいる窄まりもすっかり見られている。ぞくぞくする感情は羞恥のはずだが、どうしようもない気持ちよさも感じてしまって、堪えるように口の中の粘膜を噛んだ。
「ん、っ、はいる、もう、はいっちゃう……ぁ、……」
 尻に勇利の陰毛が触れた。くすぐったい感触は覚えがあって、もうすぐだと膝を踏みなおす。
「ゆうり、手……」
 そう要求して、繋いでもらった手を握り締めて、あともう少しをおさめきった。
「ん……、っ……は、ぁ……はいった、ぁ……」
 粘膜のおくにとん、とぶつかって、そこでヴィクトルは腰を止めた。勇利の下腹部に太腿をすべてつくには、ヴィクトルのなかの長さが足りない。だから常に膝に力を入れた状態にしなければならず、苦しい体勢から逃れるために今すぐに動き出したい気持ちと、痛みを生むだろうからもう少し慣らしたいと思う気持ちがせめぎ合う。
「ゆうり、ゆうりぃ……」
 少し前かがみになってきゅっと指を絡めて手を繋ぎなおす。ヴィクトルの右手には指輪が光っていて、勇利は繋いだ左手の指先で無意識にそこをなぞる。
「んっ……」
 手には神経が集まっているし、勇利がよく触るからそこはすっかり敏感になってしまっている。震える背筋ががくりと落ちそうになって、ヴィクトルは慌てて左手を勇利の胸の上についた。
「ヴィーチャ、動ける……?」
 勇利は我慢ができなくなったのかそう言って促してくる。
 左手を軸に、ヴィクトルは腰を浮かせた。ずずっ、と抜けていく。強烈な排泄感にだらしない声が零れた。背がしなる。
「あぁぁ……ぁ、は、ぁ……」
 中ほどまで抜き、また体重をかける。最初はゆっくりだった律動は、互いに息を乱すにつれ早くなっていく。動きに合わせて、性器が揺れて先走りをぴゅっと飛ばす。
「あっあ、あ、っ、あぁ、っは、ぁ、ゆうりっ、あっ、ぁ!」
「ヴィーチャ、ヴィーチャ……っ」
 勇利は強く手を握り締めて放出に耐えている。いつもすぐに出してしまうことを恥じているようだが、あまり長いのも逆につらい。
「ゆうり、だして、いいから、あっ……」
 自らの乳首をきゅっと摘んで刺激に中を引き絞れば、勇利はぐっと奥歯を噛んだ。ぐっとおくに、突き上げてくる。
 急に下から突かれて、あっ、と声が零れた。浮遊感。
「うん、っ……でる、でるっ……!」
「あ、ああ……ぁ、でてる……っ…ゆうりっ……」
 どくどくっと腹が震えている気がする。逆流するような感覚と共に、奥がじわりと濡らされた。膝ががくがくする。まだ達していないのに、体力を根こそぎ奪われた気分だ。
「あ、は……ァ……っは、あ、ヴィーチャ、もう、いっかいするから……」