[媚薬の力で13回セックスする本・サンクト編]



勇ヴィク本
A5/48P/R-18
夏〜秋口のシーズン開始前に、サンクトで媚薬の力を借りて13回ノーカットでセックスする話です。13回全て体位違い、特殊そうなのは潮吹き、女性用下着、ローター、S字結腸責めがあります。


 白夜が終わったばかりの七月初旬。
 それでも夜はまだ遠く、すでに九時を回っているのにまだ薄らと明るい。ヴィクトル・ニキフォロフは、はあっとため息を吐いた。着込んだスーツが暑くてたまらない。
 勇利は横でネクタイをすっかり緩めている。
 パブリックイメージのせいで、だらしない格好を気軽にすることを許してもらえないヴィクトルは、むうっと頬を膨らませた。
「いいよね勇利は。あー、暑いよ〜」
「我慢して。ネクタイを緩めて歩くヴィクトル・ニキフォロフなんて見たくないから」
「スケ連よりエージェントより、勇利が一番厳しい……」
 ふたりしてスーツを着ているのには理由がある。
 新たに勇利にできたスポンサーへの挨拶を兼ねた食事会に誘われたのだ。ヴィクトルは一度も仕事をしたことがない企業だったが「コーチもぜひ一緒に」と先方から懇願され、当事者の勇利は断れ切れなかったらしい。
 申し訳なさそうに同行を頼んできて、しょうがないなと笑ったのは二週間ほど前だったか。
 ならスーツを新調させて、という言葉は切って捨てられて、結局勇利はいつもと全く同じ、野暮ったい濃紺のスーツを着ている。
 ヴィクトルは今シーズン用に冬から注文していたフルオーダーのサマースーツを身につけ、瞳の色と同じとろりとしたシルクのネクタイと、共布のチーフをポケットに刺している。カフスは勇利の瞳の色と似たマホガニーオブシディアンに、ゴールドで装飾をあしらったものにしているんだけど、たぶん勇利は気づいていないんだろうな。
 ヴィクトルは手に青薔薇の花束を持っていた。これは、どうしてだか同席していたスポンサーの娘だという女性にいただいたものだった。
 ふたりのファンだとかで、帰り際にツーショット写真を要求されたのはすこし驚いた。
(俺と勇利の写真を求めてきたから……なのに、薔薇は俺にだけだったのは少し謎だけど)
 花に罪はない。棘も綺麗に処理された花は、花瓶に挿すだけで部屋を彩ってくれるだろう。
 そして、勇利が今日は食べ過ぎたからと送迎の車を勝手に断ってしまい、こうして歩いているというわけだ。
 あと三回、道を曲がれば自宅アパートに到着する。練習の後に一旦帰宅し、マッカチンにご飯をやって着替えてから出てきたので結構な疲労度だ。
 ああ、でも少し寄り道してバーで一杯くらい飲むのもいいかな、なんて考えていたら、賑やかな声が聞こえてくる。
「シャスリーバ!」
「シャスリーバ! ゴーリカ!」
 おめでとう、お幸せに、という声。あぁ、披露宴かと思って顔を向けると、予想通りテラスカフェは貸し切りになっていて、着飾ったひとたちが次々に祝いの言葉をかけている。
 ロシアの披露宴は日付が変わる頃まで行われる。まだ序盤の方だろうが、赤ら顔の男が多い。もうかなり出来上がっているようだ。
「わあ、すごいね」
 若いカップルなのだろう。披露宴に出席している友人もかなり若いようで、まるでスポーツバーの中ように騒がしい。
 勇利もけたたましい声に驚いて立ち止まり、まん丸の瞳でそちらを見ている。
「ゴーリカ! ゴーリカ!」
 若い男女がしきりに叫んでいる言葉に勇利は首を傾げた。
「これってどういう意味?」
「苦いよ、って言ってるんだよ」
「苦い?」
「見ているといい」
 騒ぎの中心で囃し立てられている着飾った男女――新郎新婦は、周りの声に答えるように見つめ合う。
 そして、どちらともなくキスをした。
 瞬間、拍手や口笛が飛び交う。
「わっ……」
 さっと顔を赤らめる勇利を見てつい微笑んでしまう。いつまでも初心な恋人が可愛くてしょうがない。
「1、2、3、……!」
 そこかしこでカウントの声が聞こえる。
 熱烈なキスは、愛を見せつけるための儀式だ。
「な、なにこれ……」
「酒が苦いから、キスして甘くしろって意味。披露宴でのお決まりの挨拶みたいなものだよ」
「へえ……」
 勇利は気恥ずかしくなったのかせかせかと歩き出し、ヴィクトルもくすりと笑いながらそれに続く。
 広い背は迷いなく道を進んでいる。こちらに来て三ヶ月目、もう不安げに道を歩くこともなくなった。
(結婚かあ……)
 自分たちは揃いの指輪をつけ、結婚の約束を交わしている――つまり、フィアンセだ。
 けれど、結婚の条件は「勇利の金メダル」だった。金メダルにキスをすることでふたりの契約は始まるのだ。だから、少なくともシーズンが終わる春になるまで何も分からない。
 そのことは、口には出さないけれど気になってはいた。
(けど、勇利はこっちに来てくれたし、あとは金メダル……あぁ、でも俺だって、自分でとった金メダルを勇利にプレゼントしたいよ)
 勇利に金メダルを獲得して欲しいのに、自分も負けたくない。相反した複雑な感情は幸福感となって、毛布のように柔らかくヴィクトルの身体に纏う。
(気持ちよくて幸せ。あぁ、ちょっと飲みたいな……)
 幸せな笑顔を浮かべてキスをするカップルや、囃し立てる友人や家族。騒がしくも幸せな風景にも同調して、ヴィクトルは浮かれた気分で前を歩く勇利の袖を引いた。



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 ばたばたとアパートの扉を開け、もつれるように入り込んだ広い玄関。
 いつも出迎えに来てくれるマッカチンが来ないということは、もう眠ってしまっているのだろう。
「ん、んんっ……、ぁ……」
 扉に押し付けられて、下から掬い上げるようにキスされている。勇利は玄関の鍵を器用に閉めながら、ヴィクトルの口の中でめちゃくちゃに暴れていた。勇利はヴィクトルの吐息だけで発情し、ごつごつと硬い性器を太腿に押し付けてくる。
 熱い。
 手の力が抜けて、かろうじて持っていた花束がばさりと音を立てて床に落ちる。
(俺のも、あつい……)
 自らのものはスーツのボトムスを押し上げていて、もともとジャストサイズのフルオーダースーツのせいで、苦しくてたまらない。
「……っは、ゆうり、脱がせて……」
 息苦しくて唇が離れた瞬間に、自らのベルトを掴んでかちゃかちゃと揺さぶる。指が震えて、自分では外せそうになかった。勇利はそれをじっと見下ろしている。居たたまれなくて頬が熱くなる。
(俺ばっかり欲しがってる……)
 まさにその通りでしかないのだが、普段は勇利のほうからがっついてくることが多いので、物足りなく思ってしまう。
 これほどまでに欲しいと思うことは滅多にない。
 瞬間、むわりとした湿気のような熱に身を包まれた気がした。この感覚は……。
(夏、だったような……)
 一日に大量に記憶して、その大部分を忘れてしまう性質を持つヴィクトルは、記憶のかけらをひとつ引っ張って、紐付いたものを引きずり出すというようなことができない。
「ヴィクトル、手離して……」
 ベルトすら緩められないヴィクトルの切羽詰りぶりに、勇利が助け舟をくれる。手を離すと、あっという間にベルトを解かれた。そのままジッパーフライを下ろされ、下着が伸びてしまいそうなほどに盛り上がった股間がボトムスの裂け目から零れた。
「あっ……あ、はぁ……っ」
 勇利は下着越しに、大きな手のひらでそこを摩ってくる。その刺激だけで達しそうになるのを必死に堪えた。すでにぐしゅぐしゅと濡れている性器からはまた先走りが零れ、布を沁みさせて溢れて勇利の手まですぐにぐっしょりになる。
(こんな、玄関で……っ!)
 そう思うのに、否定的な言葉を吐き出せない。もし嫌だと言って「だったら……」とやめられてしまったら、行き場のない熱の出しどころを見失ってしまう。
 それが、今のヴィクトルには何よりも恐ろしかった。
「は、ぁっ……」
 勇利の肩に手を置き、つむじに唇を寄せてふうふうと息を逃がす。勇利の髪の毛からはヘアワックスのシトラスの香りがした。
 腕が自然と勇利の頭を抱えるように動いてしまう。腰を丸めてぎゅっと抱き寄せると、重いよと笑われた。
「ん、ヴィクトル、もうすっごい熱いよ……」
 勇利はヴィクトルの胸に抱きかかえられるような体勢で、布地にぎゅうと顔を押し付けられて、そこからくぐもった声を上げている。
「っ、ふぁ、……ゆうり、もっと……」
「イっちゃわない?」
「ん、じゃぁ、こっち……」
 勇利の手を取って後ろへ導く。ブーメランパンツの細いウエストに指を引っ掛けさせ、そのまま中へ誘った。筋肉が乗って柔らかい尻を勇利が掴む。もにもにと揉まれて、勇利の大きな手にもおさまりきらないスケーター故の張り出した双球を可愛がられた。
「ん、ん……っ」
 その真ん中にある窄まりは、その柔らかい刺激だけできゅんと疼いて、早く早くと勇利の到着を待っている。
(あ、もう……だめ……、欲しい)
 我慢がきかず、羞恥心を押さえつけて勇利の手を更に下へやった。勇利の中指が窄まりに触れる。そこが物欲しげに伸縮して震えているのが、触れたことで分かったらしい。
「いれるよ」
 小さな宣言と共にぷつり、と指が入り込む。ヴィクトルの先走りに濡れた指はつっかかりながらも奥へ進んでいく。
 交わり自体はそう久しぶりでもない。すっかり勇利に入れられることに慣れて隘路を開いているそこは、それでも最初は閉じ切って、指を強く締め付けていた。
「ヴィクトル、もうちょっとゆるめて……」
「ん、むり、だよぉ……」
 ベッドの上でリラックスしているならいざ知らず、靴も履いたままボトムスだけをくつろげて立っているのだ。気を抜けばガクッと力が抜けてしまいそうな脚を、背を扉に押しつけることで支えるので精一杯だった。
「しょうがないな……」
 勇利はひとこと零すと、ぐっと身体を密着させて、筋肉がついた太腿でヴィクトルの股間を軽く押しつぶしてくる。
「あっ!」
 くにゃりと身体の力が抜け、同時に足からも力が抜けてしまう。
 だが、勇利の太腿と身体で壁に縫い付けられ、なんとか体勢を保つことになった。
「このまま僕に寄りかかって」
 再び勇利の頭を抱き、首筋の熱を腕に感じる。布が邪魔でしょうがない。脱いでしまいたいけれど、玄関ですっかり脱いでしまうのはいやだった。
「あ、はぁっ……ふ、ぁ……っ」
 そのまま勇利の指は遠慮なく、ヴィクトルのなかを暴いていく。ぐにぐにと強引に肉をかきわけ、深いところへ入っていった。勇利の指の形はすっかり覚えていて、気持ちいいところにあたる角度へと勝手に腰を揺らめかしてしまって笑われた。
「ヴィクトル、そんなに我慢できないの」
「さっきから言ってるじゃないかぁ……ゆうり、欲しい…」
 泣き言を漏らすとまた笑われる。
「分かってる、もうちょっと」
 いつもと違って余裕の声を出す勇利。けれど、股間をヴィクトル以上に硬く張り詰めさせていることは分かっている。己の胸元にある勇利の顔は涎混じりの熱い息を零して、ヴィクトルのネクタイの色を変えてしまっているだろう。
 勇利の指が一本から二本に増える。鉤状に曲げた指がクイクイと小刻みに刺激してきて、中だけでなく腕が当たっている腰や、親指の付け根が触れている尻まで、下半身全部がぞわぞわとするような刺激に負けてしまいそうになる。たとえ痛くても抱いてと言ってしまいたいのを必死で堪えた。
「っ、ふ……っ、は、ぁ……」
「ヴィクトル、そんなに耳元で声上げないで……」
 我慢できなくなるよと、泣きそうな声で勇利は言った。先ほどの余裕は虚勢だったようで、もうヴィクトルの中に入りたいと、腰をカクカクと揺らして太腿に擦りつけ、誘惑してくる。率直的な刺激にじわりと熱が上がる。
 ヴィクトルは重い身体を起こし、勇利の指から逃れたところでくるりと後ろを振り返った。尻に引っかかっているボトムスを自らの手で太腿までずらす。そして濡れた下着を人差し指と中指でぐいと横に避け、くぱくぱと伸縮している窄まりを見せつけた。
「ヴィ、ヴィクトル……」
「ゆうり、ゆうり……もう、俺のここ、凄く寂しがってるよ。熱いの、ちょうだい?」
 甘ったるく語尾を震わせておねだりする。
 羞恥は二の次で、勇利が何より一番、欲しかった。
「う、ん……」
 ぐいっと背を押され、扉に身体を押し付けられた。頬がぺたりとくっつく。
 勇利の高さに合わせるために腰と脚を曲げて体勢を低くしたら、あっという間にくつろげたのか、勇利のむき出しのものがぐっと押し付けられる。熱くて硬くて、ヴィクトルのなかをいつもめちゃくちゃに満たしてくれるもの。
 カリ、と爪に引っかかれた扉が音を立てた。瞬間、勇利はぐっと腰を押し進める。
「あっ! ……っあ、は、ぁあっ!」
 広げられる感覚に身震いする。ぎゅっと手を握り締めて違和感と快楽の合間を彷徨いながら、ヴィクトルは零れそうになる唾液を、唇をぎゅっと閉じることで堪えた。
 ぽたり、と勇利の顎を伝って落ちた汗が尻の上に落ちる。きつい締め付けと興奮で体温を急激に上げている勇利は、手も顔も真っ赤になっているようだった。長袖のスーツは、今のふたりには熱すぎる。けれどそれを脱ぐ余裕もなく、ただ欲しいという原始的な気持ちに突き動かされて、ヴィクトルは深く深く勇利を受け入れる。
「あ、っ、んんっ、…ああっ! はぁ、う…っ、ゆうり……」
 苦しいカリの部分を突破し、ずるるっと一気に押し入られる。瞬間、息苦しいほどに腹が重たくなって、無意識にぐっと歯を食いしばった。
「ヴィクトル、ちから抜いて……」
 後ろも一緒に食い締めてしまったようで、苦しげなうめき声が背後から聞こえる。慌てて肩から全身の力を抜くと、勇利はゆっくりと最後のすこしをおさめた。
「あ、う……きっつい……」
 入りきったけれどしばらくは動けない。背中にぺったりと張りついてきた勇利の呻く吐息が聞こえて、熱い息が触れて背中がぞくぞくとする。尻を掴む勇利の手が強くて、これから、激しく揺さぶられてしまうのか……そう思うと期待しかなかった。いつもならばこんな場所でと文句を言うことも忘れ、もっと欲しいと声高に叫んでしまいそうだ。
(なんで、こんな気持ちに……っ)
 考える能力が失せる。頭が靄がかって、原始的な欲求に逆らえない。
 勇利が欲しい。そのひとつだけになって、じっとしているだけなのに尻肉の中をきゅうきゅうと伸縮させてしまう。
「あ……うっ、ヴィクトル……もうしていいの?」
 痛くない? と気づかう勇利だったが、そんなもの、今は必要なかった。
「ゆうり、して、も、突いっ……ああっ!」
「なに、今日はどうしたのほんと……そんなっ、ことっ、言って……はっ、知らないよっ……」
 勇利はずるずると抜いて、勢いをつけてぱちゅんと奥を突いてくる。言葉がスタッカートのように跳ねて、間にはぁはぁという吐息が混じって、何を言っているか良く分からない。
「ん、なんでも、っ、は、…っ、いいから、ぁ、して、……もっと……っ!」
 煽るような言葉を何度も使えば、勇利はあっという間に、言葉を忘れた。ただ荒い吐息と言葉にならない音が広い玄関に充満する。
「あっあ、っ、ぁ、は、ああっ! 、ゆぅり、っ……」
 背を逸らして後ろを向くと、律動で眼鏡を少しずらした勇利が、結合部をじっと見下ろしながら、興奮したように唇で息をしていた。いつの間にかネクタイを鎖骨の下まで緩めている。その姿が雄くさくてセクシーで、ヴィクトルはきゅんきゅんと身体を震わせてしまう。
「あっ、ヴィクトル、なに……、キス?」
 ぱっと顔を上げた勇利は、ヴィクトルの、物欲しそうな顔を見てにまりと笑った。そして、口に出さず願っていたキスをくれる。首が痛くなるのも厭わず、ヴィクトルは唇をちょんと突き出して触れるだけの口づけを楽しんだ。
「あっ、は、ぁ……ん、……ゆぅり」
「はー、あっ、ヴィクトル、そろそろ、イくかも……」
 勇利はそう言うとマウンティングをするように覆いかぶさってきて、ヴィクトルは再び扉に頬をつける。手が前へ回ってきて、下着ごともみくちゃにするように刺激された。
「あっ、あっ! あ、ゆうり、つよ、っ、ああっ!」
「ヴィクトル、イく、いくいく……っ〜〜〜!」
 滑る先端を奥へ押し付けられて、ぐっと動きを止めた瞬間に、出された。熱く濡れたものがじわりと広がる感覚と性器への強い刺激に、ヴィクトルも身震いする。
「ああぁぁっ……!」
 力が抜ける開放感。ヴィクトルは下着の中に全てを零した。勇利が手を離すと、布から沁みたものがぬちゃりと糸を引く。独特のにおいが鼻をついた。
 達したことで身体から力が抜け、ヴィクトルは腰を屈める体勢だったこともあってずるずると膝を折り込み、大理石の床に尻をついてしまう。
「ヴィクトル、大丈夫?」
 立ったままの勇利が、扉に手をついて覗き込んでいる。振り返ったヴィクトルは、目の前にあった、まだ根元に力を持っている性器をじっと見た。どろどろの精液がこびりついた長大なそれ。赤く色づいて、中ほどから緩やかに落ち込んでいるそれに興奮して、無意識に唇を開いた。
「……んぁ」
 顔を近づけて、ぱくりと咥える。
「え、ヴィクトル!?」
 慌てた声が落ちてくる。
 逃げられないように勇利の尻の付け根に腕を回した。抱きつくように接近すれば、上顎に先端がずるりと滑って、柔らかい粘膜に包まれた勇利のものはぴくんと動いた。
「あ、っ、ヴィクトル、だめそこ、きもち、あ……っ」
 口の中でむくむくと育った性器は、あっという間に再び硬くなる。ごつっと突かれて、くちゃりと水音が鳴った。
「ん、ふ、んぁ、……っは、ぁ……」
 唇から離し、舌を出してこびりついた精液を丁寧に舐め取り、再び咥えて、唇を丸めてじゅぼっと頭を前後する。あからさまな水音をわざと立てるヴィクトルに、勇利は扉についていた手をいつの間にか後頭部に寄せていた。さらりと細い銀色の髪ごと、後頭部を勇利の指にぐっと掴まれる。耳の後ろに小指を引っ掛け、そのまま合計十本の指で、ぐっと押し込められた。
「ぐっ……んっ……」
 喉の奥に勇利のやわやわとした先端が触れる。くすぐったいような気持ちいいような感覚に身震いした。
 唇が塞がっているため必然的に鼻で空気を吸うと、勇利のむわっとしたにおいが鼻腔に流れ込んできて、体温が上がった気がした。
 ずるずると掴んだ手で抜き出されて、再びぐっと突かれる。鼻の頭に勇利の黒々とした陰毛が触れてくすぐったい。
 そこに鼻の根元を埋めるようにして、少し伸び上がって上から押し込むようにすると、もっと奥まで入ってしまってぐっと詰まる。
(あ、そこは……だめ……喉のおく、はいっちゃう……)
 勇利の熱いものが喉をぬるぬると這っていく。自分の意思とは無関係に喉が嚥下しそうになってしまい、引きずられて入っていってしまいそうな感覚が恐ろしい。
「んぐっ、っ」
 飲み込んでしまいそうで、やばい、と思う寸前に抜き出される。そしてまたすぐ奥を突かれた。
「あ〜〜、やばいよそれ、めちゃくちゃきもちい……」
 勇利のとろとろした声が聞こえたと思ったら、またぐっと手に力が入る。じゅぶじゅぶと淫猥な音が脳に響いた。好き勝手、まるでそういう道具のように唇を使われてしまい、怒りと快楽の狭間で揺れる。
(こんな、ひどいの……怒っていいはずなのに、っ、でも……っ、き、きもちいい……)
 敏感な上顎を擦ってごつごつと奥を突かれるのは苦しいのに、びりびりとした強い快楽に負けてしまう。
 そんな調子で奥を何度も突かれ、勇利のものは先走りをどんどん出して、舌にさらさらとした液体が伸ばされる。無味無臭だけれど何とも言えない味が舌に広がった。
「あっ、ヴィクトルだめ、もう……もっかい、っ……〜〜〜」
 勇利が達しそうだとだらしない声を上げる。
 口で受け止めるか迷った一瞬で、勇利は自ら性器を持ち、ずるっと抜き出す。
「あっ? っ、――!」
 びゅう、ぼとぼと、と、熱い液体が容赦なく顔にかかった。反射的に瞼を瞑る。勇利の長い射精は終わらず、びしゃっと何度も断続的に精液が顔や前髪にかけられてしまう。
「は〜〜……はぁ、」
 先端からまだびゅくびゅくと白濁を零す性器が触れてきた。むわりと熱いものが右頬に触れ、ぐしゅっと擦られる。
(う、ぁ……こんな、う、っ…顔に、ごしごしされてる……)
 未知の感覚に身震いした。
「あ〜〜…はあ…は……っ、ヴィクトル、やばい、えっろい」