[えっちなこと、してもいいよ♡]



勇ヴィク本
A5/54P/R-18
勇利の部屋から出てきたセーラー服を、着てみたヴィクトルに誘惑されて、えっちなことをする話です。セーラー服なゲスト9名様お迎えしています!
表紙を885様に描いていただきました!


 四月中旬。
国別対抗戦を控えた勝生勇利とヴィクトル・ニキフォロフは、長谷津へとやってきていた。
勇利の部屋の窓から見える桜の木はすっかり緑色の葉が生い茂ってしまっていて、到着した時からずっとヴィクトルは残念がっている。
柔らかい日差しが温かい午後。ホコリがちらちらと舞っているのが目に眩しい。
「勇利、まだ?」
「うん、もうちょっと……この後ろにあったような……」
勇利のベッドに座り、長い脚を優雅に組んだヴィクトルはスマートフォンをいじりながら、押し入れに頭を突っ込んでいる勇利を早く早くと急かしている。
 待ってよ、そんなすぐに見つかるわけないでしょ、と返す勇利は、仕舞ったまま忘れていたヴィクトルのポスターをうっかり見つけられてしまわないか、内心ヒヤヒヤしていた。
「もー、早くしないと東京で観光する時間なくなっちゃう」
「え、もう東京行くの?」
前日とかで良くない、と問いかける勇利は、できれば人の多い東京でヴィクトルに買い物に連れまわされるのを避けたいと思っていた。そのために、早めに日本へやってきたその足で実家に戻ったというのに。
 だがヴィクトルは待てないよとでも言うかのように、そわそわとベッドの上で身体を揺する。
 ギシ、と随分とがたがきているベッドが音を立てた。
「国別はもう三日後だよ」
「だから明後日くらいで良いんじゃ……。ヴィクトルは練習する必要ないし」
 国別対抗戦にヴィクトルはエントリーされていない。なので、勇利のコーチとしてやってきたはずなのだが……。東京で買い物をするためではないかと、つい邪推してしまう。
「勇利、国別は大事な試合だよ。プレッシャーからは解放されているのに、スコアは公式記録に認定されるんだから」
「いや、それはわかってるけど……」
 三日後に控える国別対抗戦は、本格的にロシアへと拠点を移す前の最後の試合だった。国別対抗戦は他の競技とは違い、チーム線であり、応援なども行うフランクな大会だ。リラックスして高得点を狙おうとコーチであるヴィクトルが言うのはよく分かる。
 だが今シーズンはいろいろなことがあった。好奇心を丸出しにしたマスコミに追われることがたやすく想像できる。それは勇利にプレッシャーとしてのしかかるだろう。やはりギリギリに到着したい。
 勇利の部屋の中は、大物家具は置いたままだが、服などはすでにロシアへ移動させていた。そのせいでどことなくガランとした雰囲気がある。
 三月末から四月の初めにかけてフィンランドのヘルシンキで行われた世界選手権に合わせて荷物を送り、大会後その足でサンクトペテルブルクへと移動したのだった。
 ちなみに、ヴィクトルがもともと暮らしていた住まいを間借りさせてもらう形になっている。
 だがサンクトペテルブルクで荷物を片付けている暇はなく、練習と翌シーズンに向けたプログラムの準備であっという間に日が経っていて、未だダンボールから少ないワードローブを取り出している状態だった。
「うーん、確かこの辺りに入れたと思うんだけどなあ……」
 勇利が探しているものは忘れ物などではなく、使い古しのスケート靴だった。一件だけ断りきれなかった日本のテレビ番組の企画でチャリティオークションをすることになっていて、そこに出品とコメント出演を乞われたのだ。現在使っているものはもちろん不可能だが、サイズアウトしてしまったものや、へたって使い物にならなくなったものはいくつかこの部屋に残っているはずだった。
「勇利は物持ちがいいんだねぇ。俺のスケート靴なんて、使えなくなった端から誰かに貰われて行ったよ」
「えっ!?」
 ヴィクトルの言葉が聞き捨てならず、勇利は押入れから顔を出して振り返った。畳の上に正座する形になった勇利は、ベッドの上のヴィクトルを見上げる。
「なに?」
「いや、誰かにあげちゃったの?」
「欲しいって言うから」
 その奉仕精神は見事だが、正直もったいないと思ってしまってぎゅっと拳を握る。
「だからヴィクトルの部屋、あんなにシンプルだったんだ。服しかないし……」
 ヴィクトルの家に招待されたとき、感激と共に一通り見た記憶を呼び覚ましながら言うと、ヴィクトルは良く分からないという顔をする。
「使わないものを置いておいたって仕方ないだろ〜?」
「いやいや、ヴィクトルの使用済みシューズとかお宝でしょ! えっ待って、次使えなくなったら僕が貰っていい?」
「……うーん、何かやだな」
 そのキラキラの目が。そう言われて、一切自覚がなかった勇利は首を傾げる。しかしヴィクトルが不満げに頬を膨らませているのを見て、ようやく失態に気づいた。
(ヴィクトルファンの部分を出すと、いつもこうだなあ……)

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 頭が爆発したようになってしまって、手も興奮で震えていておぼつかない。勇利は気づけばヴィクトルをベッドの上へ押し倒し、その身体をめちゃくちゃに堪能していた。
 セーラー服を着たヴィクトル。
 中学時代に見慣れていた制服を着たヴィクトル。
 倒錯的な状況に、心臓が早鐘のように鳴っていてうるさい。
「ヴィ、ヴィクトル……」
 服の上から手で撫でさする。まずは青い襟、そして、それはすぐにスカーフをかき分けて胸元へ。
 薄い夏用セーラー服のぱりっとした白い布に大きな手のひらで触れていると、熱かったのか、ヴィクトルはぴくんと身体を震わせた。頬が赤く火照りはじめていて、熟した果実のように甘く見えた。
「はーっ……やばかぁ……ヴィクトル……」
「なに、ニホンゴ、わかんないよ」
 覆いかぶさり、頬にかじりついて甘噛みしていると、ヴィクトルはくすぐったそうに身を捩る。そして猫を可愛がるように首の後ろを撫でてきた。少し冷えた指先が触れるか触れないかの距離にいて、ぞわっとした感覚が身体を駆け巡る。それは勇利を盛り上げるスパイスにしかならなかった。凶暴な気分になりながら、舌を出して頬をざり、と舐める。ヴィクトルは頬だけでなく、透明の産毛も柔らかい。
「あっ……」
 顔を持ち上げ、再び落とす。今度はヴィクトルの唇へ。薄い下唇を挟み、持ち上げて離す。ぷるんと揺れたそこは焦れるようにわなないた。そういう風にねっとりと愛していたら、余裕じみた大人の笑みで包容していたヴィクトルも、だんだんと余裕を失っていく。
「ん……ゆうり……」
 股間を擦り合わせてたまに腰を揺らすくらいの刺激を与えてみた。スカートの下、ちいさな下着に包まれた性器が、熱を持ち始めるのが分かる。
「んっ! ふぁ、ぁ……」
 唇を重ねて舌を絡め合わせ、ヴィクトルの息を奪っていく。枕に後頭部を押し付けられ、ただ受け入れることしかできなくなっているヴィクトルは時折身体を跳ねさせる。それは生理的な動きだが、勇利には拒絶しているように感じてしまい、もっと逃げないようにと衝動で押さえつけてしまう。
「ん、ゆ、ぅり……くるし……」
 その言葉は筋肉と体重を全部使って押さえつけていることなのか、キスで息ができないからなのか。きっとそのどちらも。
 ヴィクトルは酸欠で顔を真っ赤にして、ぱたぱたと手のひらでシーツを叩く。降参、のジェスチャーに、勇利はようやく唇を離した。
 だが至近距離で見つめ、身体を離すことはしない。
「ヴィクトル、どうしてこれ、着たの?」
 ぷい、と顔をそむけられた。答えたくないらしい。
 そんな態度を取られたら、知りたくなってしまう。勇利は腕立て伏せをするように膝と腕を起点に身体を持ち上げ、上から下まで、じろじろと不躾にヴィクトルを見つめた。
 青いカラーにスカーフ、白い半袖シャツの袖も青く、スカートも同じ色。
 ひらりと揺れるリボン型のスカーフも、スカートも、今はくったりとヴィクトルの身体に寄り添っている。とまらないウエスト、そこから覗く下着は少し食い込んでいた。中心が大きくなっている証拠に興奮する。
 勇利は脚の間に自らの右膝を入れ、割って入っていく。ジャンプで鍛えられた太腿、その筋肉でヴィクトルの性器をきゅっと押しつぶす。
 そこはジーンズ越しでも分かるほどに熱い。
「あっ!」
「ねえヴィクトル、言ってよ」
「んっ……は、っ」
 腕に力を込めてゆっくりと身体全体を上へ、そして戻っていく。硬い筋肉で刺激されることにヴィクトルは慣れていない。強すぎる刺激に耐えるように肩へすがってきて、きゅっと顔を埋めて隠してしまう。
「だめだよヴィクトル、見せて。えっちなこと、してもいいんでしょ?」
「う、うぅ……」
 ヴィクトルはその言葉に、おずおずと顔を戻した。羞恥に潤んだ瞳は睨みつけてきているが、正直興奮を煽る材料にしかならない。
 いけないことをしている気分になってくらりとした。
「はあっ……ヴィクトル、それ逆効果……」
「えっ……あ、ああっ……!」
 ごりゅぅっ、と音がしそうなくらい強く擦り立てる。
 瞬間、ヴィクトルはびくびくっと身体を震わせて、達したようだった。
「は、はあっ……は、ゆぅりぃ……」
 どうしてそんなことをするのと、荒い息の合間に問われる。
「そんなの、ヴィクトルがやらしいからだよ……」
 なんでこんな服着ちゃったの。僕の思春期はヴィクトルと共にあったのに。
 あの頃、何もかもを持て余していた。上手く跳べないジャンプ、馴染めない学校生活、そしてヴィクトルへの幼い恋心。
 その想いを昇華してしまうようなことが、訪れるなんて思ってすらいなかった。夢のようだ。
「ヴィクトル、キスしていい?」
 その言葉は幼い自分の願望だったのかもしれない。ぎゅっと胸元を押さえる。
 どうしてだか涙が零れそうで、目頭が痛い。
「いいよ」
 ヴィクトルは突然の言葉も、優しく受け入れてくれる。すぐに睫毛が伏せられた。プラチナブロンドの冗談みたいに長いそれは、すこし震えていた。あどけないキス待ち顔に我慢がきかず、荒々しく貪ってしまう。
「あ、っ…ふ、ぁ……んんっ、んむぅ、ぁ…ゆ…ぅり……」
「は、っ……ん、ヴィクトル、?ぃ、く…と……っんん、は」
 ぷちゅ、ぴちゃ、といやらしい水音を立て、ヴィクトルの薄めの舌に己のそれを絡めてじゅっと吸い上げる。角度を変え、深く入り込んで歯の裏側から上顎へ向けて舌を伸ばせば、くすぐったいのと気持ちいいのが、ない交ぜになったらしい。甘えるように指先で髪をちょんと引っ張ってくる。その仕草が可愛すぎて、やめてやれなかった。
「っ、ふ……んんっ、ゅ、…んむ、ぅ…」
 深いものをゆっくりと浅くしていき、最後は濡れた唇をちゅ、ちゅ、と触れて宥めて、唇の端に溢れた唾液を指先で拭い去る。深い息をしているヴィクトルは普段は隠れている左眼も晒して、あまりにも無防備だった。
「ゆうり……?」
 くったりと身体の力を抜いているヴィクトルのシャツの裾から手を差し入れた。何度見下ろしてもヴィクトルがセーラー服を着ていて、不思議な気分になると共に興奮する。こういう趣味あったかな、とふと頭をよぎるが、これはもう仕方ないと思う。
(ヴィクトルってだけで、僕は興奮しちゃうんだから……)
 ただヴィクトルであるだけで冷静ではいられないというのに、そのヴィクトルがセーラー服を着て、あまつさえ「なんでもしていい」と言うのだから、理性のリミットは外してもいいということだろう。
 勇利は手だけで綺麗に割れた腹筋から胸元までをまさぐり、つんとたちあがっている乳首を摘んだ。きゅっと引っ張って、親指と人差し指でこするように刺激する。
「あっ……」
「すぐ見つけられるね……」
 力を持っている乳首が白いシャツを押し上げていることを伝えたら、ヴィクトルはかあっと頬を赤くして手の甲で顔を隠してしまう。
「いやだよヴィクトル、顔見せて」
 空いたほうの手で掴んで強引に手をどけて、じっくりと観察する。ヴィクトルは感じていても美しさを失わないのに艶めかしさを増すから、勇利の欲望も際限なく膨らんでしまう。
 ヴィクトルはスカートの中の脚をもじもじと擦り合わせていた。
「……下、気持ち悪い?」
 さっき達したそれはスカートにしみこそ作っていなかったが、下着はもうぐしょぐしょだろう。裏地は濡れているかもしれない。そう思うと中を覗き見したい衝動に駆られて、勇利はごくんと唾を飲み込みながら身体を起こした。