「え〜この夏樹くんって子、けっこう無愛想そうじゃない? 俺かわいい子がいいなぁ〜」
「いやこの子はかわいいですよ〜! 今流行りのギャップモエってやつですよ、お客さん! 甘い物に目がなくって、食べるとかわいく豹変しちゃうんスよ〜」
根元が黒く染まった金髪の男は、紙よりも軽い口調でそう言う。品定めをしている男は壁にずらりと並んだ写真の、一番端の写真をコンコンと叩いた。



「夏樹くんだっけ、よろしくね〜」
「……ハイ」
「ほんと無愛想だね〜そんなんじゃ社会に入ったらやってけないよ?? あぁ、でもキミのような子は社会には出て来れないかな〜〜? ん〜〜??」
「……はじめていいですか」
「なんだよ、本当に無愛想、かわいくねぇな。あ、そういえばキミ、甘い物には目がないんだって?」
「……」
「だからこの部屋はこんなに甘ったるい匂いなんだねぇ。何これ、いちご味のローション? こっちはメロン? 何、こんなものあるの」
はは、と笑うダミ声が狭い部屋に響く。夏樹は表情をひとつも変えることなくマットの上に上がった。それ以外何も身に着けていない、薄っぺらいシャツを脱ぐ動作はあまりにも作業的だった。



「っ……ふ、ぁぁ、っおい、しぃ……」
「はは、何キミ、二重人格なの?」
股間にうずくまる夏樹の手にしっかりと握られているのはプラスチックの容器。中には黄金色のぬめる液体がおさめられている。その味は蜂蜜で、夏樹は服を脱がした客の股間にそれを無造作にぶちまけ、そのまま顔をつっこんでどんどん舐め取っていく。
緩く立ち上がる陰茎に甘いぬめりを擦りつけ、べろりと小さな舌で舐め上げた。客はウッ、と醜い声を立てる。どうやら彼の弱い部分らしい。
夏樹はそこへ舌を積極的に這わせる。途中、味が薄くなってきたら手に持っている容器をどんどん傾けた。頬や額にかかってもおかまいなしだ。夏樹の瞼の上にはとろりとした液体が乗っかって零れ落ち、てらりと薄暗い照明に照らされて鈍く光る。
「んんっ、ふ…っぁ、んんっ、あまい、おいしい、よぉ……おじさんのココ、おいしいぃ」
とろんとした瞳と、舌っ足らずな口調。最初からつけていた眼鏡はとっくにマットの外へ投げられている。目が悪いのか焦点が時折合わない瞳は、客の情欲をふんだんに煽った。ごくり、と客は生唾を飲む。
「そういえばキミはなんでこんなところで働いてるの?」
「……甘いもの、いっぱい食べたいから」
顔を上げた夏樹はそう答えて、すぐにまた舐め取る行為に没頭しはじめた。甘い物がそれほど好きではない男が顔をしかめる位、部屋の中には甘ったるい匂いが充満している。満タンに入っていた容器の中身はもう半分ほどに減っていた。
「ふうん。じゃあおじさんのもっとたくさん食べてよ」
「うん」
こくこくと、年端も行かない子供のような仕草で頷く夏樹。客はその姿に段々と絆されていく。
「キミ、かわいいねぇ。夏樹くん。名前覚えとくよ」
「おじさんの甘いのまた食べさせてくれる?」
「うんうん。また来てあげるからね」
ニコニコと笑った客は夏樹の髪をくしゃりと撫でる。ローションがそこにもついていて、ぬるりとした感触が客の手に残った。



「おじさんもうイきたいなぁ」
「まって、……苦いのは苦手だから、ぁ……後ろの口で食べ、る……」
小さな喘ぎ声を出しながら夏樹は自らの指で後ろを割り開いていた。準備は済ませているのかすぐに指を抜き、客の膝の上に乗る。もう残り少ないローションを手のひらに零し、それを夏樹は自らの口元にべたりと当て、そのまま横に引っ張る。
顔半分がねっとりとした甘いローションに濡れた。それはすぐに重力にならって滑り落ち、夏樹の胸元を濡らす。
「んっ」
滑り落ちた一筋がぷっくりと膨らんでいる乳首に触れ、夏樹は声を漏らす。男は、その声に誘われるように乳首に唇を寄せた。
「っあぁぁ! だ、めぇ、そこ、やぁ…!」
「ここ弱いの? ピンク色の乳首なのにはちみつの味がするね。噛んだら味が変わるかな?」
「やぁぁ! かわんない、かわんないよぉ、あぁっ、やら、そこだめぇ…!」
「おじさんのココも気持ちよくしてよ」
「っんん、うん、ぁ……おじさんの苦いジュース、全部ここで食べさせていただきまぁ、す」
それは夏樹の決め文句なのか、やけに畏まった調子でそう呟く。そしてそのままずるりと一気に客の陰茎を体の中におさめた。びくびくと体が震えて、体についたローションが辺りに飛び散る。
「夏樹くん、ナマOKなの」
「はぁ、っ、おじさんだから、だよ……っ、ほんとはだめ、だけどっ、内緒、……ね?」
小首をかしげる夏樹に客は笑顔のままうんうんと頷く。客はすっかりと夏樹の虜だった。夏樹は、これでまた甘いものがたくさん食べられる、と、小さく笑みを零した。
「もっと甘いの、ちょぉだい……。おれ、あまいのも、おっきいのも、だいすき」




2012年07月28日