「っ、くっ、ふ、ぅ……ひびと、もうだめだ、」

股間にうずくまる金ピカの髪をぎゅうぎゅうと押し戻しながら六太は途切れ途切れの声を上げる。

「やらよ、やめない」

しかしその言葉はそんな一言で簡単に退けられてしまう。舐められたまま話された挙句、更に追い討ちをかけるようにじゅうと強く吸われて、六太は喉をヒッと引きつらせた。

「も、っ、だめ、……い、いっちゃう、から、さぁ……!」
「イきなよ。見ててあげる」
「だから、や、なんだっ、て、ぇ……!!」

それが何よりも嫌なんだと六太が主張しても、日々人はそれを分かることはきっとないだろう。六太は日々人の頭をぎゅっとおさえつけて、しかしそれはいつしか押し返すためではなく、もっと強く、と引き寄せるような動きになっていて、それに気づいている日々人は指先を強く上下させた。

「っアァ! や、つよ、……っ、も、ヤメ、っあぁ、」
「気持ちいいっしょ?」
「うるさ、っ、もぉ、だめ、やだ、ぁぁ……」

びくびくと体を振るわせた六太は、あっさりと達してしまった。日々人の口の中に苦い液体がぶちまけられる。六太は最初、射精の余韻に浸りすぎてその事実に気づけなかった。しかしとろんとした瞳でぼんやりと見下ろしていた視界に入っていた日々人の揺れる金髪や、上下する喉をなんとなしに見ている間に段々実感が浮かび、はっとした瞬間に六太の頬は真っ赤に染まった。

「ひ、日々人ぉ!」
「んー、なにムッちゃん」

喉に精液が絡むのかしゃべり辛そうに顔を上げる日々人の唇の端にてらてらと濡れたような光が見えて、六太はそれはもういたたまれなくなって乱暴にそれを指先でぬぐう。日々人はされるがままだ。なんだか嬉しそうに笑っているようにも見える。六太は更に居心地が悪くなって、もうどけ、と乱暴に言い放った。

「えぇ〜、もっと堪能させてよ」
「もう十分だ! 離れろ!!」
「ヤダ。だってムッちゃんに触れるの、何日ぶりだと思ってるの?」
「十日だろ。十日くらい我慢しろよ」
「俺は一日だって我慢できないの!!」

スウェットの下だけ脱がされた情けない格好の六太は、ベッドの隅に放り投げられた布の塊を取ろうと手を伸ばすが、それを寸前で日々人の手によって阻まれる。まだ終わらせないとばかりに押し倒され、両方の手首を掴まれて腕の自由を奪われる。

「ねぇムッちゃん、好きって言って♪」
「なに、言って……」
「だってムッちゃん、いつも言ってくれないし、俺はいっぱい言うのにさ〜」
「お前が言いすぎなんだよ!」
「でもムッちゃんは殆ど言ってくれないじゃん……」

俺、切ない。と、そんな子供のような顔で言ってくる男が、一度外を出ればサムライボーイと呼ばれ、若き宇宙飛行士として将来を期待されているだなんて。信じられないし、信じたくなかった。家では甘えたなんて、どこぞの下世話な女性雑誌が全力で食いつきそうなヨタ話。

(でも事実だから困る)

しかしその相手は金髪ブロンドの美女でもなく、アジアンビューティーでもなく、まだ宇宙飛行士にもなり切れない、冴えない三十路越えのオッサンなのである。

「ねぇ〜ムッちゃんってばぁ」
「あぁもう! 好きだからさっさとどけっ!」
「ムッちゃん、そりゃね〜よ」

強引に腕を振り払いながら言えば、日々人はベッドから降りた六太の背中に情けない声を上げる。六太はふふ、と小さな笑みを浮かべた。こんなに残念な男が外ではあんなにかっこいいなんて。口が裂けても、言えないと思った。




2012年08月16日